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『BAD COMMUNICATION』(フラン&ベル小説) 第1話

夕暮れ。

遠く山々の稜線に深いオレンジをにじませながら沈む太陽。忍び寄る夜の帳。刻々とその色を変える風景を窓越しに見るともなく見ながら、長い廊下を歩く。

等間隔に切られた窓から斜めに差し込む夕日が、自分の行く手に点々と光の溜まりを作っていて、ほんの少しだけ神々しくて、ふと、昔どこかで見た礼拝堂を思い出す。

礼拝堂・・・教会。

誰かに手を引かれて行ったような気もする。映像で見ただけのような気もする。いつか見た夢の話かもしれない。でもきっと思い出せない。
いずれにせよ、今の自分のありようは、世の教会の使命とは到底相容れないものだ。

(どうでもいいけど)

夕日くらいでうじうじと感傷にひたる趣味はない。それに、くだらない雑用ではあるが一応、仕事中だ。
手の中の紙束を抱えなおして、歩を進めていると、不意に後ろから声が聞こえた。

「ちょっと、そこのチビ」

(それってミーのことですかねー?)

廊下を歩いているのは声の主を除けば自分一人。

(そうみたいですねー)

納得した。が、無視した。
そんな失礼な呼び掛けの相手をしてやるほど、暇でもなければ親切でもないし。

「おいったら。オマエだよオマエ」

声の主は、少しイラついたように言葉を続ける。

のんびり廊下を歩く。それにしてもムダに長い廊下だなー。

「無視すんなっ!」

お腹すいたかも、と思う。今日の夕飯は何にしようかなー。

(あ)

ふと、背後の空気が変化するのを感じる。
黒く色がついて、重くなる。
ついで、何かが鋭く空を切る音。

(おっと)

迷うことなく、かかとを鳴らして膝を落とししゃがみこむ。両手で抱えた頭の上を複数の風切音が通りすぎ、数メートル前方の壁に突き刺さる鈍い音がした。

(投げナイフ。刃渡り約15cm。数は6本)

背後からの攻撃を難なくかわして、一人ごちる。
音から情報を得ただけで見ていないのは、しゃがみこんだ拍子に床にばらまいてしまった書類を拾い集めるのに忙しかったからだ。

すでにかわした攻撃の行方に注意を向けるのは無駄な行為で、実戦では命取り。
師匠の教えである。

とはいえ。

(んだよチキショー)

床に散らばった紙を集めるのは、正直言って飛んでくるナイフをかわすのより数段メンドクサイ。内心悪態をつきながらせっせと拾い集めていると、背後で舌打ちが聞こえた。

(残念、気配には聡いんですー。なんたって霧の術士ですから)

一枚残らず拾い集めた紙束を床の上でトントンと打って、角を揃えた。
紙束を抱えて立ち上がり、また歩きだす。
背後の人物がついてくる気配はなかった。何の用だったのかは知らないが、諦めたのだろう。

長い廊下のつきあたり。壁にはナイフの柄がおしゃれに6本生えている。その右手にドアがひとつ。
目的地到着。ドアブザーを押そうとした指が止まる。

(い・・・)

頸動脈の真上に冷たい感触。
背後をとられ、首筋に刃物−たぶんナイフ−を押しあてられている、と気付く。
気配を消しきって接近していた襲撃者は、ナイフを引かないまま耳元にささやいてきた。
薄笑いまじりの、底冷えのする声。

「王子ナメてっと殺すよ?」

(・・・・・・・・・)

約三秒。

腕の中の紙束がするりと奪われると同時に、首筋の冷たいナイフの感触が消える。
顔の横を腕が通り、いましがた自分がドアブザーを押そうとした部屋の、ドア脇の小さなくぼみに親指が押し付けられる。
場違いな軽い電子音が鳴ってセキュリティシステムが指紋を認証し、部屋の主を受け入れる。

「あと諦めんの早すぎ。つまんねーの」

背後から、すっ、と眼前に回りこんだ人物の後姿。
メッセージなのか独り言なのか判じかねる言葉を残したその一瞬あとにはもう、ドアは静かに閉まっていた。

(・・・・・・・・・)

約三秒。

ため息をついて、ドア脇のネームプレートに目をやる。

『Belphegor』

自分が書類の束を届けようとしていた、独立暗殺部隊ヴァリアーの若き幹部。
入隊してまだ二日目。幹部の顔などまだ一人も知らない。自分と同じ霧属性の幹部も例外ではなかったし、嵐属性だというこの若年幹部についてはなおさらだ。
若年といえども、入隊したのはわずかに8歳だったというから、ベテランなのだろうが。
結局、顔を見ないままだった。見たのは、目を刺すほどに鮮やかな外ハネの金髪。

その後姿を思い出し。背後に回られた感覚を思い出し。

「・・・・・・・・・ムカツク」

ムカツク奴。奇しくも、部屋の中でも同じセリフが呟かれているとも知らずに、フランは舌打ちした。

To Be Continued...
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後書き(文字反転)

本誌でベル&フランのコンビに心臓ぶち抜かれたブログ主が出来心で書いた、超々短編小説です。(←試験勉強しますとか言いながら何やってんだか!)
フラン視点でベルとフランの初対面。続くかもしれません。

(追記)かもしれません、だったんですが、アップして2時間たって読み返したら後味最悪なことに気づいたので、すみません続きます。続けさせてください。
本誌登場時点でもあの調子なので別に仲良くはならないと思いますけど、なんかちょっともう少し。

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