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『サイレン』(ベル&スクアーロ小説)

幹部連中を筆頭に荒くれ者ばかりのヴァリアーでは、隊内のケンカでケガ人が出るのは日常茶飯事だ。
しかし、手練ぞろいだからか結局は本気でないからか、死人が出ることはめったにない。

それでも、殺そうと思えばいつでも殺せる、とベルは思う。たとえ相手が誰であっても。
いつでも、どこでも、いくらでも。

それはとてもカンタンなこと。

誰かに会うとき。誰かのことを考えるとき。同時にその誰かを殺すことを考えている。
相手が嫌いだとか憎いだとか、そういうこととは全く関係なく。

たとえば今日。久しぶりにスクアーロと昼食をとった。
前回の任務がどうだった、ボスの機嫌がこうだった、と他愛ない話をする。お互い口が悪いから、軽く言い合いになることもあるし、たまに笑うこともある。そんな会話をしながら、オレは目の前にいる銀髪の男を、心の中で、

殺す。

スクアーロがフォークに刺した肉を口に入れた瞬間に、オレはテーブルの上の食事用のナイフを取って彼の白い顔に投げつける。とんでもなく反射神経のいいスクアーロは、とっさにナイフをかわすだろう。しかし0.5秒でも生じた隙に、オレは片手でテーブルをひっくり返して、跳びのくスクアーロの足を狙って、本物のナイフを・・・

「おい」

肉にナイフを入れながら、テーブルの向こう側からスクアーロがこちらを睨んでいる。

「ん?なに?スクアーロ」

オレは笑顔で答える。

「もう食わねーのか?」

「うーん、ちょっと休憩中」

料理を半分食べたところで、ナイフとフォークを皿の上で休ませていた。
テーブルに両肘をついて手のひらの上にあごをのせて、首をかしげて聞いてみる。

「食べる?ほしいならあげるけど」

「バカか。そういう意味じゃねぇ」

呆れたように言われた。

「じゃあなに?」

「おまえ今いくつだ」

「17」

指で示してやる。

「育ち盛りだろ。ちまちま食ってねーでしっかり食え。がっつり食え」

「さっきチョコドーナツ2個食べたから大丈夫」

「それは食事とは言わねぇ。だからそんな痩せてんだろ。おら食え。もっと食え」

ナイフの先を揺らして、オレの皿の中身を指すスクアーロ。
オレはおかしくなって笑う。

「スクアーロってさ、たまにルッスみたいなこと言うよね」

言うと、とたんに嫌な顔をした。

「あのカマ野郎と一緒にすんじゃねぇ」

「だって本当だもん」

「勝手にしろ。でもそれはちゃんと全部食え。オレの前で食い物を残すな」

「はーい」

ほらね。
スクアーロは、荒っぽい言動のわりに、「いい奴」なんだ。
本人は自覚していないけど、万事がこんな調子で部下の面倒見もいいから、隊員たちにも慕われている。

日々、ボスの横暴に耐え、ルッスの愚痴を受け流し、レヴィとマーモンの小競り合いの仲裁をし、日本にいる山本のメールの相手をし、部下の訓練に付き合い、しまいにオレの栄養状態の心配までしている。

(将来、ストレスでハゲるタイプ)

オレはうんうんと相槌をうってスクアーロの説教を聞いているフリをしながら、夢想を再開した。

いま、目の前で、自分が17のときは牛一頭でも食える気がしたもんだとか熱弁を振るっているスクアーロ。
オレの想像の中では、かわいそうにナイフで足を傷つけられて床に倒れ、オレにとどめをさされようとしている。
オレはナイフを振り上げて、迷うことなく振り下ろす。

「ごちそうさまでした」

皿の料理をすべて片付けて、オレは東洋式に顔の前で両手を合わせた。

スクアーロを嫌いだとか、別にそういうことはない。そう、積極的に殺したいと思っているわけではない。

イメージ・トレーニングと言えば近いだろうか。
しかし、任務のために修行しているとか、そういうこととは違う。

人と会って話をする。相手の仕草を観察する。そういう誰しもがすることに、オレの場合は「相手を殺すシミュレーションをする」というオプションが付いているというだけのこと。

幼い頃からそうだった。父も母も双子の兄も、なんでかオレをかわいがってくれた乳母もいつも笑顔だった庭師の老人も。想像の中で何度となくその命を奪った。そのうち夢想するだけでは飽き足らなくなって、実際にやってみたりもした。

ヴァリアーの他の幹部たちも。ボンゴレの守護者たちも。オレの想像の中で、みな真っ赤な血を流して、揺らめくように倒れ伏していった。

ふと親友に会いたいと思うのと同じように、彼らの死を思う。
そうすることで、ぐしゃぐしゃだった頭の中が、少しだけクリアになる気がする。

逆に、もし彼らが自分に対してそう思っていたとしても、全然構わなかった。むしろ、それが正しい姿、正しい関係のように思えた。
それがフツーじゃない、とは思わない。

(だって「フツー」だったことねーもん)

自分以外の人間になったことなんてないから。自分以外の人間の気持ちなんて分からない。
これが自分にとっての「フツー」。

人が死ぬって、そんなに特別なことじゃない。
殺すのも。ときには殺されるのも。

それをしない理由も特にないが、今それをする理由もまた特にないので、放っておいている。この仕事をしている以上、ナイフを突き立てる相手は他にいくらでもいる。

けれど、少し手を伸ばせば届く場所に、いつも、それは、ある。

ディスプレイ上に並ぶ記号をデリートするように。書き違えたクエリを修正するように。

消していく。

ただそれだけのこと。

THE END
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後書き(文字反転)

ベルのモノローグ。
ルッスを差し置いてお母さんしているスクアーロです。周りのダメっ子たちを放っておけないこの人が好き。

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