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『怖がらせる -Furchtenmachen-』 1

今日は朝から雨。

ベッドの中で目を開ける前から分かっていた、この停滞した気圧と湿度。毛布をはねのけて嫌々身体を起こしてみれば案の定、窓の外は庭園が霞むほどの濃い霧に包まれて、防弾仕様のガラス窓を打つ雨粒はさらさらしとしと、止む気配もない。

今日は久しぶりの一日オフだから、街に出てチンピラ狩りでもして遊ぼうかなんて昨夜は考えていたけど、傘を持って出かけるのは面倒だし服や靴や髪が濡れるのも嫌だし、舌打ちひとつで諦めることにする。同じ理由で、ケーキセット付きのブランチを食べに外出する案も即却下。

仕方ないから部屋で鉄板のDVDでも見ようと思ったら、先週、ちょっとしたことでかんしゃくを起こして、むしゃくしゃして投げたナイフがDVDプレーヤーに当たって壊れて、そのまま部屋の隅に放ってあることを思い出した。つまりこれも却下。ちなみに先週何があったかと言うと、レヴィのバカが任務にてこずって帰還が遅れたせいで、奴の分の書類仕事を押付けられたんだよね。オレは悪くない。後でレヴィにプレーヤーの修理代を請求してやろうと思っている。

(あ゛ーイライラするー・・・)

ルッスの部屋に乗り込んで何か美味しいものでも作ってもらおうかと思うも、ベッドサイドの端末を手元にひっぱり落としてスケジュールをチェックしてみれば、オカマは昨日から休暇を取っていた。しかも「南の島にバカンスに行ってきまぁす♪」なんて余計な情報が書き込まれている。ちきしょ、いいな。他人を羨ましいなんて思うことはめったにない王子だけど、このときばかりは、南国の太陽の下、浜辺で肌をこんがり焼いているだろう変態オカマのことが心底羨ましくなった。夏が近いとはいえ、雨の日はまだまだ肌寒い。

ついでに他の幹部の予定も見てみようと、一度起こした身体をベッドに逆戻りさせて、仰向けに寝転がりながら端末を操作する。その結果、オレ以外で休暇を取っているのはルッスとフランだけだった。ルッスはバカンス中で、カエルは・・・

「なんだこれ」

思わず声が出る。フランのスケジュール欄は、休暇日であることを示す赤いカラーで塗られているのと同時に、『X』の一文字が書き込まれていた。

(X・・・?)

ちなみに『バツ』じゃなくて『エックス』だ。最初に思いついたのはボスのイニシャル、でもわざわざ一文字にして分かりにくく、かといってちょっと考えればすぐに思い当たる、中途半端な書き方にする意味はないと思う。スケジュールを拡大してフランの月の予定を確認してみたけど、『X』が入っているのは今日だけだった。

何の気なしに覗いたスケジュールとはいえ、暗号のような文字が妙に気になる。端末の画面をそのままにタッチパネルを操作してフランの端末にコールを繋ぐと、聞こえてきた呼び出し音は『かえるのうた』だった。なんだこれ、とまた思ったけど、そういえばフランが入隊したばかりのとき、奴が端末の操作を覚える前に、オレが勝手に設定した上に変更できないようにプロテクトをかけてやったんだっけ。フランに限らず直コールなんてめったにしないから、すっかり忘れていた。

その『かえるのうた』を二順ほど聞かされたあと、スピーカーから「はーい」と少しだけ電子風に歪んだカエルの声が届いた。

「よーバカガエル」

「なんですかバカ王子」

朝も夜も関係なく、相変わらずのローテンション。向こうがカメラをオフにしてるみたいで映像は映らず、声が聞こえるだけだ。

「げんきー?」

「このコールが入るまでは元気だった気もしますー」

「あっそ。『X』ってなに」

「はい?」

「オマエの今日の予定」

「あー・・・」

しばしの沈黙。

「秘密でーす」

「は?なに言ってんの?王子に秘密とか許されると思ってる?」

「ばりばり思ってまーす。てことでさよーならー」

ぶち、と音を立てそうな勢いで一方的に回線が切れた。

うわなんだこいつ!なにこの態度!すげームカつく!

秘密の予定なら公開モードにすんな、と言いたい。機械系に弱くて、また興味もないらしいカエルが公開モードも非公開モードも頓着せずに予定を書き込んでるのは分かってるけど、余計な奴に余計なコンタクトを取ったせいでさらにイライラが募った。苛立ちに任せて端末を壁に投げつけようとするも、ちょうど目の端にDVDプレーヤーの残骸が映ったせいで、すんでのところで思いとどまる。代わりに柔らかいベッドの足元に、心持ち乱暴に投げ出してやった。

気分はまったく晴れないけど、おかげでとりあえずの予定が決まった。
あのクソ生意気なカエルをシメに行ってやる。

To Be Continued...
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