『やさしいきみにキスをして』(京子&ツナSS)
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ああ、好きだなあ、と思ったのはいつからだっただろう。
教室の片隅でひっそりと輝く光を偶然にでも見つけることができたのが、私のなかにある小さな誇り。
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放課後、通りがかった廊下からたまたま見えた教室の中。椅子に座ったまま机に頭を載せて片腕を垂らしてぐっすり眠る姿に思わず笑みがこぼれた。疲れてるのかなあ今日は寒いのに大丈夫かなあと心配になって、靴先を方向転換してそっと教室に入る。起こそうか、それともなにか掛けてあげようかと迷いながら何気なく覗き込んだ表情に心臓が小さく揺れた。
山本君や獄寺君と一緒に優しく笑う顔を知っている。なにか怖いものと戦っていたときの真剣な顔も知っている。でもこんな風に小さな子どもみたいな表情で静かに静かに眠る人だなんて知らなかった。寝顔を見ることなら初めてではないはずなのに、すうすうと僅かに聞こえる寝息がなぜだかとても愛しく感じて。
(あんまり、ほかの女の子に見せたくないなあ)
ふと胸に湧いた気持ちに驚く。こんな感情の名前は知らない。すごくいけないことを考えてしまった気がして自分で自分に戸惑った。頬が熱くなって鼓動が速くなって一人でわたわたと慌ててやっぱりもう帰ろうと思って、でもなんだか名残惜しくなってその姿をもう一度盗み見る。
制服のシャツに包まれて規則正しく上下する男の子だけど少し華奢な肩の稜線、そこから覗く白いうなじ、ちょっと綺麗な色の瞳を今は閉じている腕の上の横顔。起きる気配がないのをいいことに、そっと近づいて机のそばにしゃがみこみその無防備な寝顔を見上げた。いつも人に囲まれている姿を今だけは独り占めできているような気がして少し嬉しかった。そしてそのときなぜか小さく湧いた悪戯心と、たぶん特大の勇気と、放課後の教室だけが持っているよくわからない魔法に背中を押されて。
気がついたときには、そっと腰を上げて彼の頬に柔らかく口づけていた。
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「起きろバカツナ」
「っ痛ぁ!もう、蹴って起こすのやめろっていつも言ってるだろリボーン!ていうかおまえまた学校に……あ」
「なんだ?」
「うん、あのさ、聞いてよ今すごく嬉しい夢見ちゃった。なんと京」
「帰るぞバカツナ」
「なんだよ聞くくらいいーじゃんケチ!それにさっきからバカバカって感じ悪いぞ!ちょっと待って、待ってよリボーン!」
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THE END
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#5月23日はキスの日らしいのでリプで一番目に指定されたキャラが二番目に指定されたキャラにキスをする
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Twitterのお題で書かせていただきました。
ゆきなさん(リプ:京子ちゃん)、めけさん(リプ:ツナ)でした。かわいい二人が大好きです!ありがとうございましたー!
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